この味と香りがクセになる!ふるさとの味「なれずし」
皆さんは「なれずし」ってご存じですか?全く知らない方も、ちょっと知ってる方も、これを読めばもっとなれずしについて詳しくなれるはず?!なれずしを購入出来るお店の情報も!
こんにちは、編集部の高垣です。私も子どもの頃からなれずしを食べて育ちました。クセがあるけど、大人になるにつれて、そこがどんどん美味しく思えるようになってくるんですよね。
ところで、なれずしって?
なれずしは、サバのお寿司をアセの葉で巻いて乳酸発酵させた和歌山の郷土料理。
アセというのは、暖竹(だんちく)というイネ科の植物のこと。和歌山では「アセ」と呼ばれているんです。
こちらがアセの葉。
これでお寿司をくるくると巻いて、木桶にぎゅうぎゅうに詰めて漬け、発酵させたものがなれずしです。
どんな時に食べるの?
なれずしは、主に地域の秋祭りの日に合わせて作られます。他にも、お盆で家族が帰省してくる時に作って食べたり、お土産に持って帰ってもらったり。なれずしは家族や親戚が集まる場で食べられるごちそうなんです。
地域・家庭によって様々!あれもこれもなれずし
有田地域ではご飯の上にサバをのせますが、和歌山県南部ではサンマやアユを使うところも。お寿司を巻くのに使う葉も、バレンや芭蕉を使うところがあったりと、その土地になじみ深い物が使われ、地域によって多種多様ななれずしがあります。
また、お店や家庭によっても味付けや発酵期間は様々。大きさも、切り分けて食べる大きな物から、そのまま食べられる小さめサイズの物まで色々。きっとお好みのなれずしが見付かるはず!
早熟れと本熟れの違い
なれずしには「早熟れ(はやなれ)」と「本熟れ(ほんなれ)」の2種類があります。
早熟れは、酢を使いあまり発酵させずに作るため、クセが少なく、なれずしに慣れていない人も食べやすい味になっています。我が家で作られていたのもこちら。
本熟れは、早熟れと違い酢を使わず、塩で自然発酵をさせます。発酵により味や香りに独特のクセが出ますが、一度ハマると「よく熟れた物でないと!」という方も多いです。
なれずしの作り方
ここでなれずしの作り方をご紹介します。教えて下さったのは、御菓子司 御寿司 つるやさん。なれずしを販売し始めてから、もう100年ぐらいは経つんだとか!
つるやさんのなれずしは、伝統の本熟れ。大体、食べる1週間前に仕込むのだそうです。早速作り方を見ていきましょう!
①サバの塩漬けを用意し、塩出しをしておきます。骨も取っておきます。
②塩飯を握り、「にんにこ」を作ります。
和歌山では、おにぎり等ご飯を握った物を「にんにこ」と呼びます。なんだか可愛いですよね。
③「にんにこ」の上にサバをのせて、アセの葉で巻いていきます。
私も手伝ったことがありますが、これがなかなか難しい!素人が巻くと、中のお寿司が隙間から見えてしまったり、形が崩れてしまったりします。手早くこんなに綺麗に巻けるのは熟練の技なんです。
④アセで巻いたなれずしを木桶に入れて重石を置き、発酵させます。
つるやさんでは、夏なら3日、寒くなったら4~5日くらい発酵させるそうです。
そうして完成したなれずしがこちら!
私もいただいてみました!我が家のなれずしは早熟れだったので、本熟れのなれずしを食べるのはほぼ初めて。
乳酸発酵をしているので、ヨーグルトやチーズにどことなく似ているような少し酸味を感じさせる香りがします。でも、やっぱりこれは他でもない「なれずし」の香り!
納豆などと同じように、最初は気になる香りも、食べているうちにだんだんとクセになってきます。サバの旨味がご飯にも移っていて美味しい!
確かにクセは強いですが、そこが美味しさにも繋がっています。よく熟れたなれずしにしか出せない特有の味と香り。なるほど、これは食通に好まれるのもわかります。お酒のお供にも良さそう!
どこで買えるの?
湯浅町では、 御菓子司 御寿司 つるやさんで1本1,300円(税込)で購入することが出来ます。寒くなると発酵しなくなってしまうため、5月~11月頃のみの販売だそうです。
店頭販売だけでなく、電話やFAXをすれば全国発送も行ってくれるとのこと!送っているうちに発酵が進みすぎないよう真空にして送ってくださいます。でも、よく熟れたなれずしが好きなお客さんには、真空にせずに送るという対応もしているそう!よく熟れたのが好きな方は、お願いしてみてください。
その他、スーパーマーケットのお寿司コーナーに置かれている場合もあるので、湯浅を訪れた際、興味のある方は覗いてみてくださいね。
こんなところでも食べられる!
和歌山では昔ながらのラーメン屋さん(中華そば屋さん)にも、なれずしが置かれていることがあります。中華そばとも相性バッチリ!見付けたらぜひ食べてみてください!
受け継がれていく、ふるさとの味
つるやのなれずしも、お義母さんからお義姉さん、そして奥さんへと代々受け継がれてきたそう。そしてまた、奥さんから息子さん夫婦へと受け継がれていっているそう。
つるやの奥さんは、「美味しいと言ってもらえるのがとても嬉しい。これからもそう言ってもらえるよう、受け継いだ味を大事に守っていきたい」とおっしゃっていました。
前述したように、家庭により様々な違いのあるなれずし。残念なことに、最近は家庭で作る人は減ってきていますが、和歌山に根付いた豊かな食文化を絶やさないよう、つるやさんのようになれずしの味・製法を代々伝えていきたいものです。
これを読んで、なれずしに興味を持つ方・食べてみようという方・一度作ってみようと思う方が増えれば嬉しく思います。私も今度作ってみようかな。