創業100年!湯浅の鮮魚問屋が手開きで作るこだわりの干物ができるまで

干物は主婦の救世主

「この町のお魚は新鮮で美味しい」
港町で生まれ育った私にとって“獲れたての魚を囲んだ食卓”は当たり前だけど、県外の方からすると驚きの美味しさだという。魚料理の中でも我が家の定番である「干物」は、下味がついているものもあり、焼くだけで一品のおかずになる主婦の救世主。家族の健康を考える上でも、栄養価の高い干物はうってつけで、その上保存もきく。こんな神食材、他にはないのではないか…と常々感じていました。

しかし、最近若者の間では「干物離れ」が進んでいるらしい。骨をとるのが面倒だとか、グリルを使うと片付けが面倒だとか…そんな声があると聞いて、私は勿体ないと思った。「どうにか同世代の若者にも干物の魅力を伝えられないか」そう考えた私は、干物を加工する現場を取材しようと試みました。

一枚一枚、手開きで干物をつくる

地元で暮らす私も干物を食べることはありますが、干物ができる工程は見たことがありません。少し緊張しながら訪れたのは100年以上続く老舗の鮮魚問屋「かね七(しち)商店

出迎えてくれたのは、4代目である田邊 義博(たなべ よしひろ)さん。

招かれた作業場では、既に従業員の方が黙々と魚をさばいていました。

早朝、市場で新鮮な魚を仕入れたら、すぐにさばいて内臓を取り除き、一匹一匹ブラシを使ってしっかりと洗います。

余分な血のりや脂が残ると臭みの原因になるんだそう。

代々受け継がれてきた方法で一枚一枚、”手開き”で干物を作ることがかね七商店のこだわりです。

魚を三枚におろしたら塩汁に漬け込む。漬け込む時間は魚の大きさによって決まっているんだそう。毎朝新しいものに作り替える塩汁は、無添加の天日塩を使うこだわりようです。

「塩は毎回同じ濃度なんですか?」と尋ねてみると、「季節に合わせて塩加減は変えてるよ。」と教えてくれた田邊さん。塩汁は全て田邊さんの舌で味を確かめてから漬け込む徹底ぶりで、長年育まれた感覚が美味しい干物を作る鍵になっているんだ、と感じました。

塩汁から揚がった魚は、新鮮そのもの。目が一切濁っておらず、まだ生きているかのように感じられます。

干し網に並べられていく工程も圧巻の一言。魚がきらきらと輝いてみえて、まるでたった今海から揚がったかのように錯覚しました。

こちらはさんまの味醂干し。下味がついていることをしっかり目で確かめてから、丁寧に干し網に並べていきます。仕上げに白ごまを振りかけます。

この後4時間乾燥させたのち、干物が完成します。

干物の味は魚の鮮度で決まる

美味しい干物を作る秘訣を探るため田邊さんとお話する中で、何度も耳にしたフレーズが「鮮度
やはり鮮度の高い魚を仕入れることが一番大切だという。市場で魚を仕入れる際は、身の大きさ・厚み・脂のりに加えて何より重要な鮮度を目利きするように心掛けていると教えてくれました。

脂の乗った極上の干物

自宅に帰って、かね七商店自慢の干物を食べてみました。
種類はさんまの味醂干し、真あじの開き、かますの開きの三種類。

焼き上がる頃には香ばしい魚の香りが食欲をそそる。ホロっと持ち上げた身が大きく、口中に旨味が広がります。美味しくて美味しくて、あっという間に完食してしまうほどでした。

守り続けたい、かね七の干物

取材を終えて、私の胸の中に沸々と熱いものが芽生えていることに気付きました。それは紛れもなく、地元の干物を大切に守っていきたいという想いです。100年以上続く長い歴史を紡いできたかね七商店の干物を、これからも地域の人に食べ続けてもらいたい。そして、この町を訪れる人にも、その美味しさを知ってもらいたいと強く感じました。

もし湯浅町を訪れる機会があれば、ぜひかね七商店の干物を食べてみてください。きっと「また、この町に帰ってこよう」と感じていただけるはずです。

美味しくて、手軽に食べられて、栄養価の高い神食材「干物」
この町の誇りである特産物の魅力を地域のみならず、県外の方にも伝えていけるように…私たちの挑戦は始まったばかりです。

かね七商店の干物が買えるところ

かね七商店
住所 湯浅町湯浅2804
定休日 水・日曜日
全国発送中!公式サイトはコチラ
※営業時間等に関しては直接お電話にてお問い合わせ下さい。

湯浅町で干物が食べられるところ

1.日本料理 横楠
落ち着いたくつろぎの空間で湯浅名物生しらす定食や美味しい丼物が味わえるお食事処。こちらでは、干物を単品で提供しています。お酒の肴としてだけではなく、定食や麺類・丼物と組み合わせて頼むのもいいですね。

種類は、あじ、かます、あい。お値段は640円~となっています。
※注文から焼き上がりまで30分程度お時間をいただきます。

2.湯浅温泉 湯浅城(ゆあさおんせん ゆあさじょう)
「一度はお城に泊まってみたい…」そんな願いが叶うお宿!極上のお料理と天然温泉が自慢です。メニューは、「干物しらす御膳」1,980円と小鍋がプラスされる「釜揚げしらす干物御膳」2,640円。なんと、湯浅温泉湯浅城では、ご自身で干物を焼きながら食べることが出来ます!干物は季節により変わり、お好みの1種類を選んでいただけます。

※お食事のみご利用のお客様はお電話にてご予約が必要です。
(3日前までに要予約、3名様~、1日3組まで)

3.パートナーズハウスゆあさ
愛犬と一緒に泊まれる施設でいただく絶品ランチ。地元の特産品をふんだんに使った干物定食は大人気です。目で見て楽しめる小鉢も嬉しいですよね!日帰りでのご利用も可能。ぜひ、ワンちゃんと一緒に遊びに行ってみてくださいね。

干物定食は1,320円。種類はアジ、バレコ等々、日によって変わるそう。

4.かどや食堂
生しらすと釜揚げしらす、2種類のしらす丼が味わえる駅前のお食事処。こちらでは、干物定食が食べられます。単品も注文出来ますよ。

干物定食は780円~。+250円で、ご飯をしらす丼に変更可能です。
干物の種類は、あい、あじ、さんま、鯖みりん、たちうお等。単品は640円~。