凄まじいインパクトのフリーペーパーこそ、湯浅町の飲食店紹介冊子「湯浅ごはん」である。食べ物をテーマにした情報誌なら「肉汁溢れるハンバーグ」とか、「湯気立つオムライス」なんて表紙が当たり前の世の中で、なぜ人の顔がずらりと並んでいるの?と疑問に思う方も多いだろう。
湯浅町に来るなら必読の一冊!
申し遅れましたが、私は編集部のあいりです。実はこの冊子を手掛けた一人でもあります。(その上、裏表紙の中央に私の似顔絵がちゃっかり登場してます。)本日は私たちが自信を持ってお届けしている「湯浅ごはん」について《もっと知ってほしい…》という作り手側の熱意の元パソコンに向かっている次第であります。
・コンセプトは?
ずばり冊子を作る上で大切にしたことは二つ
①美味しく作ってくれたお料理を《美味しそうに》撮影すること。
②お店の方と会話することで、その想いをしっかり理解すること。
一見ありがちなコンセプトのように見える二つのコンセプトですが、実際に実現させるのは至難の業でした。なぜなら湯浅町でこのような取り組みをすること自体初めてだったから。「雑誌に取り上げてもらったことなんてない。」という店舗さんも少なくありませんでした。
そんな中で取材交渉をし、一軒一軒足を運んで撮影させていただく日々で私たち取材班も地元民ながら知らないことが沢山ありました。「こんな想いから、この料理が誕生したんだ…」「こんなメニューあったの!?」と発見の連続…仕事ながら楽しい時間を過ごしました。
中には「こんなに綺麗に写真撮ってもらうの初めてやよ。嬉しいわぁ。」と言ってくれるお店の人もいて、少しウルッときたのを覚えています。せっかく美味しい料理が、これまで沢山の人の目に触れる機会がなかったんですよね…。カメラ初心者の私も一から勉強し、素人ながらも《どれだけ美味そうに撮れるか》にこだわって撮影を続けました。
・表紙はなぜ人の顔?
この表紙を描いてくれたのは、その名もみつはし そーた氏。普段は湯浅町でいちご農家を営みながら、趣味で絵を描く私の友人です。
彼の絵はとても個性的で温かい。この冊子の制作が決まった時から、彼の絵を表紙に使いたいという個人的な強い想いがありました。
彼に表紙のデザインの相談をしたところ、「どんな冊子にしたいの?」と質問されました。私は「美味しそうな料理を掲載して店舗のお客さんを増やすことはもちろんだけど、料理を作っている人の想いや温かみが伝わるような今までにない冊子にしたい。」と答えました。
そんな私の想いからみつはし氏が思いついたのは、お店の人の顔をずらりと表紙に並べるデザイン。初めて聞いた時は「40店舗以上あるお店の人の顔を果たして描きあげることが出来るのか!?」と半信半疑でしたが、もし完成させられたら最高の冊子が仕上がるような予感がしました。
そして出来上がった表紙は予想以上に最高の仕上がりとなりました。一人ひとりの表情がリアルで、「この人に会ってみたい」「この人の料理を食べてみたい」と思わせてくれます。地元民の中では「これ○○のおばちゃんや!」「これ〇〇のおいやんかな?」と似顔絵クイズが流行り、冊子の中身を見るまでに表紙について30分ほど話に花が咲くという嬉しい声を聞くことができました。
・オンラインではなく、紙にこだわる理由
「湯浅ごはん」を制作する際に、オンラインの方がより多くの方に情報提供できるんじゃないか…という意見もありました。そんな中で私たちが紙媒体を選んだ理由、それはまず地元の人に地元の面白さ・魅力を知ってほしかったからです。
湯浅町には沢山のお爺ちゃんお婆ちゃんが暮らしています。携帯電話やパソコンを持たない世代が多く暮らす私たちの町で、オンライン限定の情報配信をするのは不親切なように思えました。湯浅町を訪れた人に魅力を伝えることはもちろんだけど、私は地元の人がまず地元を好きになることが最優先であるように思います。
そうやって地元の中で町のファンが増えれば、この地を訪れる人を町に迎え入れる時の心持も変わってくると思うんです。
冊子を手に取ってくれる人へ
最後に、この冊子を手に取ってくれた方へのメッセージを送りたいと思います。
(なんだか、しんみり…。)
私たちはこの冊子を作り上げる際に「手間をかける」ことにこだわって制作を進めてきました。簡単に電話のやり取りで済むところを、お店まで押しかけて取材することや、わざわざ一眼レフカメラを引っ提げて撮影に挑むこと、業者には頼むことなく冊子のデザインを一から組み立てて納得のいく内容に仕上げること…一見面倒に思えることが、この冊子にとって一番大切なことでした。
この「手間」にこだわるからこそ、「お店の人とその想いが伝わる冊子」が仕上がるんだと信じて取り組んできた私たちの選択に間違いはなかったと確信しています。
この冊子を通して、この町にはまだまだ知らない素敵なお店と、魅力的な人たちが沢山いることを知っていただけたら幸せです。「湯浅ごはん」を手にとっていただき、ありがとうございました。
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